TOP私が思っていること少年少女たちを取り巻く社会的、環境的、及び心理的・精神的状況  
■私が思っていること  
   
少年少女たちを取り巻く社会的、環境的、及び心理的・精神的状況

イ. 少年少女たちを取り巻く社会的状況  

 戦後は、戦争による貧困と養育者の不在が主な原因で、少年少女たちの非行や犯罪、そして孤児になる状況があったが、勿論現在でも貧困と養育者の実質的な不在が原因した非行、犯罪、浮浪が無いではないが、皮肉にも裕福が故にそして養育者の存在があるが故に、少年少女たちがそういう状況に追い込まれているケースも少なくない。 
 そして、かつて家庭教育の補完的役割を果たしていた学校の現状及び実態は、彼らへの健全育成に対する阻害要因にさえ成り下がってしまった感がある。
 更に、地域が健全育成のための役割の一端を担っていた時代は過ぎ去り、「地域の中の他人」が、「他人の子」にはおろか「自身の子」にさえも目を向けなくなっている。
 つまり、家庭内にも学校にもそして地域にも、少年育成の役割を果たすべき場所が無くなり、居場所を見出すことができずにいる少年少女たちが「社会的に放り出されている」状況にある。
 しかしその一方、高齢者に対しては、国家上げて「介護、介護の大合唱」で、特に介護保険導入後は「高齢者が金のなる木」として、そのニーズが懇切丁寧に掘り起こされ、大切に扱われている。国民の注目は、一心に高齢者に向けられている。
 高齢者が大切に扱われていることを否定するものではないが、少年少女たちが置かれた社会状況を考えると、せめて高齢者に対すると同じ程度に、子育て・少年育成にも注目と関心が注がれ、もっと多くのエネルギーが費やされるべきなのである。
 「社会全体から打っ棄られている」と感じている少年少女たちの、心情やいかばかりか?察すると痛々しい気分にならざるを得ないが、彼らは、不登校、引きこもり、犯罪等の問題を引き起こしてまで、「何とかしてくれよ。もっと注目してくれよ。」と、声無きSOSを発信しているようである。

ロ. 少年少女たちが置かれている環境的状況  

 少年少女たちが今置かれている環境は、「豊かさに囲まれた甘やかされた環境」と言えるが、さも「物質主義と拝金主義が絶対」で、それが彼らの全ての欲求を満足させているが如くである。溢れる金と物に囲まれさえいればそれが、「至福」でもあるかのような錯覚に、皆を陥れている。
 しかし、「金と物による豊かさに一生囲まれている環境」こそが、彼らの健全育成を阻害しているのである。
 また、彼らは、携帯電話やパソコン等の便利グッズ、そして、テレビゲームや漫画雑誌等の快楽グッズ、に囲まれてさえいれば、満足感や幸福感を味わうことができる、と錯覚させられている。  
 しかし、これらのグッズに取り囲まれた生活こそが、「人と人との心の繋がり」の大切さを蔑ろにさせ、危険極まりなく彼らの心を蝕んでいるのである。

ハ. 少年少女たちが被る心理的・精神的状況  

 社会的状況と環境的状況によっていることに疑いの余地はないが、これらが相乗的に作用して、少年少女たちに対して心理的・精神的に追い込み、心の空洞化を進めさせている。  
 そして、どの年齢期よりも少年期の持つ身体的及び心理的エネルギーは多く、それ故に発散する先を求めているのだが、現在は、その「エネルギーを発散する方法と方向」を示すことができずに、却って「誤った」「エネルギーの発散する方法と方向」を指し示している感がある。 
 つまり、少年少女たちは心の深層部分では、「もっと大切な対象に対してエネルギーを発散させたい」と訴えているものの、その訴えに適切に呼応してくれない現実に苛まれ、正に彼らは「異常行動と無気力」に向かうのである。  
 しかし、「不幸にもこんな時代に生きていかざるを得ないこと」を嘆いたり諦めたりするのを看過することはいともた易いが、彼らに対して「少しのヒントと助言」さえ示してやれば、「金や物以外のもっと大切な何か」を発見させてやることができるだろうし、その切っ掛けを掴ませることもできるはずである。  
 そして彼らは、心から訴え掛ければ、それを正面から受け止めてくれる大人の存在を知り、それがタイムリーな指針を示す内容であることを知れば、心理的抑圧を克服することができるだろうし将来への希望を見出すことも可能になるはずである。

 
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